いつもこの時期なると、野原には花や蝶が飛び交って、春のような錯覚を覚えることがあります。実際、秋の花に混じって季節外れのタンポポやカタバミが咲いていたりします。冬に向かうのと夏に向かう違いはありますが、春と秋の気温や湿度がちょうど今頃、交差するのでしょうか。
コスモス畑の竹垣の竿の一本ずつに、アキアカネやノシメトンボが止まっていました。カメラの技術が無いため、もう一つうまく表現できなかったのが残念ですが、ユーモラスで長閑な光景でした。
他にも虫たちはあちこちにいます。畑で作業をしていると、引いた草の塊の中から、コオロギが飛び出してきます。パタパタと羽音が聞こえるのはバッタたちです。あんな小さい身体でも結構大きい音がするものです。
大きな葉の間から、人の指よりも太くて長い蝶や蛾の幼虫が現れて、驚かされます。雨が降って、ほんの2,3日畑に行くのをサボったら、キャベツやブロッコリの葉が、ボロボロになっていました。よく見ると葉の表面に葉の色と同じ色をしたヨトウムシがあっちにもこっちにもへばりついていて、取っても取っても切りがありません。
今日のタイトルは「虫」です。しかし、カテゴリーはいつものようにオーディオ、どういう繋がりかというと、古いオーディオマニアの方はご存知かと思いますが、オーディオで「虫」と言えば、グレース(品川無線)のカートリッジです。
かくいう私も、若い頃その名前と姿は広告やオーディオの記事で知っていただけで、実物は今回初めてです。確かに、あだ名の通り、全体が虫に見えなくもありませんね。また透明なクランプがトンボの複眼を連想させます。
F8はNHK放送技術研究所と共同開発されたMMカートリッジです。このへん、MCのDENON、DL-103と似た成り立ちですね。
末尾がD、L、H、C、M、V、Fなどにわかれています。交換針のクランプの色で区別されていて、それぞれ音の傾向が違うそうです。その中でもF8Lは有名です。私が今回手に入れた物はクランプが透明なので、F8Lだと思います。
音の印象は、ちょっと感動的なくらい透明感のあるものでした。清澄と言えばよいのか、グリュミオーのバイオリンが透き通るように綺麗に鳴りました。エラ&ルイのエラの歌声がいつもにもまして、可憐です。
Paul Desmond&The Modern Jazz Quartet
ポール・デスモンドのアルトが気持ちいいですね。MJQとの共演は、すごくリラックスしていて、そのくせジャジーです。このカートリッジは、ただ透明感があるというだけでなく、この演奏の楽しくリラックスした雰囲気、空気感、ニュアンスなどもちゃんと伝えてくれます。
スピーカーなどでも言えることですが、欧米の機器は彫刻で言うとミケランジェロのように筋肉質でダイナミック、反対に日本製は、仏像のように余計なものを削ぎ落し、あっさりした印象ですが、このカートリッジは良い意味で日本的ですね。
私の乏しい経験では、MCカートリッジに比べてMMカートリッジはスクラッチノイズを拾いやすい気がするのですが、F8はそういうところもないですね。またレコードの内周に進むに連れて歪むということもなく、トレース能力も優れている気がします。
畑の虫はともかく、私はこの”虫”がすっかり気に入ってしまったので、ずっと使い続けようと思いました。それではじめはDENONのシェルに付けていたのですが、グレースはやはりグレースが似合う気がして、あとからシェルだけ別に購入しました。シェルでも音が変わるそうですが、私の耳はそんなに良くないので、DENONとの区別は付けられませんでした。
この記事へのコメント
駅員3
奥が深過ぎて、私にはついていけませんが、記事を拝見していて、オーディオの楽しさが伝わってきます
stone-9
グレース、聞いたようで、無いような、覚えていません。
また一匹、虫が増えたんですね。(笑)
しばちゃん2cv
ポールデズモンドはデイブブルーベックとよく演奏していたと記憶してりますが。
ところで 「バ」 って花の名前があるんですか。忘れられない名前です。
そらへい
こんばんは
音楽の成績が落第すれすれだった私です。
そのコンプレックスの裏返しで、奥行き深そうにしているだけですよ。
でも、オーディオの楽しみが伝わったのは嬉しい限りです。
そらへい
こんばんは
自然の向こうに、高層ビルが見える都会に私もかつて住んでいました。
その落差にかえって、自然も高層ビルも際立つ気がします。
こちらは、自然の向こうは自然の山と空です。
平板を感じることがあります。
オーディオもまた、楽しい出会いですね。
そらへい
こんばんは
私のところも、 しばちゃん2cvさんのところと似たり寄ったりです。
今日も町内のお葬式を済ませてきました。
明日は字の運動会です。
おまけに私は今年組長があたってます。
私の短気が原因で、ちょっとしたトラブルも抱き込みました。
まだまだ修行が足りないなぁと思ってます。
ポール・デスモンドはデイブ・ブルーベック・カルテットで
あの有名な「テイク・ファイブ」を演奏していますね。
「バ」というのは、何のことでしょうか。
ひょっとしたら、ブラウザのせいでレイアウトが崩れているのかも
「バ」がつく花はミゾソバしかありませんのでそのことかもしれません。
ピカテントロプス
「虫」というニックネーム、すっかり忘れていました。
F8は交換針を変えるだけで、いろんな音色が楽しめるところが良かったですね。
こんなに多くの交換針のバリエーションのあるカートリッジは他には無かったと思います。
F8LとMを使ったことがありました。 Lがスタンダードで端正な音、Mが力強くてJazz向きだったように思います。
そらへい
こんばんは
さすがにご存じの方がいらっしゃいましたね。
F8は交換針の概念を持ち込んだ最初のカートリッジらしいですね。
そして、Cがクラシック向きだそうです。
ヤフーに出ているのは、ほとんどF8Lです。
針を交換するだけで、いろんな音色が楽しめるので
手に入るのなら、いろいろなバージョンを試してみたいですね。
ベルベット
デスモンドのSAXは気持ちよい
TAKE FIVEも最高ですね。
パパボン
虫といえば、子供のころは何でも手づかみできたのですが。。。
最近朝ジョグ後の草むしりのおかげで草むらのコオロギなどの虫たちやミミズ・青ガエルも観察できるように気持ちが戻りました。
オーディオにも「虫」という言葉が存在したんですネ!少し驚きです。
現役中は「虫」といえばプログラム中の「バグ」の事でした(笑い)。
yukky_z
音楽だけでなく、植物や生き物の名前も覚えられ
凄く勉強になります^^
たいへー
虫好きな少年時代でしたが、この「虫」は知りませんでした。
「鳴き声」の違いを楽しめる、良い趣味ですね。^^
そらへい
こんばんは
カートリッジも、自分のシステムに対して
当たり外れがあると思いますが、
うまくハマると嬉しいですね。
ポール・デスモンドのアルトは、柔らかでなめらか
本当に気持ちよいですね。
そらへい
こんばんは
一瞬の空の美しさを眼に止めながら
早朝のジョギング、気持ち良いでしょうね。
畑で作業していると、山裾の雑木林で野鳥の声がしたり、
近くをバッタが音を立てて飛んでいったり、
小さな野草の花や蝶、トンボに囲まれて、
自然の営みが感じられることに喜びを感じますね。
そらへい
こんばんは
音楽も植物、生き物も全部生齧りです。
よく間違えていると思うので、気をつけてください。
今まで何気なく見ていた自然の名前をすこしだけ知るようになり
おかげで自然に対する興味が増して来たことは事実ですが。
そらへい
こんばんは
世の中の虫、中でも音楽の虫、ジャズの虫
あるいはオーディオの虫になら、なってみたいですね。
家の葉っぱが、虫食いだらけになりそうですが(笑)
エルモ
グレースの評判は子供の頃から聞いていましたが、残念ながら一度も使った事がありません。就職して機材を少しずつ集めだした頃、すでに販売されていなかったような記憶が。その頃はヤフオクなども無く、中古市場といえば海千山千&有象無象の怪しいもので。そういう意味では今はいい時代になりましたよね。聞いてみたいなぁグレース。^^
Studio-Oz
そらへいさんは、お花や昆虫にもお詳しいですね!
赤とんぼを未だ今年は見ないんですが、時間帯の問題でしょうか?
アレの群れを見ると秋だなぁと感じます。
カートリッジの話題はいつも、遠くから拝見しております。
いつか、交換してみたいのですが・・・
ぼんぼちぼちぼち
特に三枚目の あっしはあまり観たことないように思いやす(◎o◎)
そらへい
こんばんは
若い時は、MMカートリッジしか使ってなくて、スクラッチノイズにはずいぶん悩まされました。ジャズ喫茶で聞こえないのがずっと不思議でしたが、後年、MCを使い出して納得が行きました。
グレースでも、F8は当時相当出回ったのでしょうか。シュアーのVⅢタイプ15よりは安い値段で、けっこうヤフオク出品されてますよ。
オルトフォンとは対局にある音という感じはしますが、日本のオーディオメーカー、頑張っていたんだなぁと思わせる音ですね。
そらへい
こんばんは
もともと花や鳥など、殆ど知らなくてコンプレックスを持っていたくらいなのですが、5年余りまえ、職場も転機をきっかけに、急速に覚えることができました。やや俄仕立て、間違いもあるかと思います。
田舎でも赤とんぼの群れは滅多に見かけなくなりましたね。私たちのところは、田んぼが未だあるのですが、水路が地下に埋まってしまって、ヤゴの生息状況が悪くなっているのだと思います。
その点、家の裏山の方は、まだ水辺もありトンボは昔ほどではないにしてもたくさんいますね。
そらへい
こんばんは
私もこの花を初めて見つけたときは、名前がわかりませんでした。
小さい図鑑だと載っていません。野の花にしては色が鮮やかなので、園芸品種の種が飛んでいるのかと思ったのですが、調べるとやはり、帰化植物で、園芸ものが野生化したようです。
別名「三尺バーベナ」とも言うそうです。
今造ROWINGTEAM
いろいろと詳しいのですね。^^
自分は植物や昆虫に疎いので尊敬します☆
FUCKINTOSH66
ヤナギハナガサ、可愛い〜。それにしてもいつも思うのですが、そらへいさんは草花も昆虫もよくご存知ですよね。こちらではじめて知る名前が多いです。あ、カートリッジのF8のことも、これが虫と呼ばれていることもいま知りました。
竹垣の竿に並んで止まったトンボもナイスショット!です。
追伸:Village Vanguardでのライブレポ、アップしました。まったくJazzには詳しくない者が書いたつたない内容ですが、よかったら読んでみてくださーい。
そらへい
こんばんは
唐辛子みたいに真っ赤な赤とんぼがいますよ。
私も以前は、植物も昆虫も鳥も、ごく一般的なものしか
知りませんでしたが、
年を取ってくると興味が湧いてくるようになるものですね。
そらへい
こんばんは
ジャズやオーディオは付き合いが長いですが、真ん中で長い中抜けがありました。鳥や蝶、花の名前は、まだ5年ほどです。歳を取ってから、急速に覚えたので、急速に忘れてしまい、また、覚えなおさないといけないこと、しばしばです。
今、Village Vanguardでのライブレポートに行ってきました。
リアルタイムで、遠く海をわたって、ニューヨークのジャズの老舗へ行かれたレポートに接することができ興奮してます。モノクロームのジャズメンの写真群、古いジャズの匂いがプンプンしています。そして、今も昔のままに息づいていて、また新しい歴史を作ろうとしているところが、すごいことですね。
大槻昌弥
文字通り「GRACE=最高級を手にする喜び」にふさわしい製品作りを今昔変わりなく続けているようです。
一部トーンアームなどの補修部品やシェルなど復刻パーツが、60周年記念に併せてわずかながら生産されたようです。
そらへい
こんばんは
コメントありがとうございます。
気づくのが遅くて、返信遅くなりました。
今もそのような記念となるものが生産されたり
発売されたりしているんですね。