台風の影響で朝から雨、気温も低めです。少しずつ音楽が心に染み入りやすい季節が近づいてきているようです。
ジャズの曲名をタイトルにした本は村上春樹さんをはじめたくさんあると思います。棚には同じ著者で「クレオパトラの夢」も並んでいましたが、まず短編集のこちらを手に取りました。
恩田陸さんの著書はずいぶん昔、文庫本で「6番目の小夜子」を読んだことがあります。ミステリーと言うか少しホラーじみてもいて、不思議な魅力を感じました。
当時はまだ作品も少なかったのですが、その後順調に作品を発表されて、独特の恩田ワールド、とくに若い人に人気があるようです。吉川英治新人賞とか本屋さん大賞などをとったりしているそうですが、私は「6番目の小夜子」以来です。
「朝日のごとくさわやかに」・・・このタイトルを聞くと私の場合、すぐウィントン・ケリーの演奏が頭に浮かびます。ほかに私の持っているレコード、CDだとMJQの「コンコルド」と「ラスト・コンサート」、ソニー・クラーク・トリオ、ソニー・ロリンズの「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜 」、ジョン・コルトレーンの「ライブ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」あたり、ボーカルも含めるとジューン・クリスティの「サムシング・クール」などでしょうか。
本書は短編集で全部で14編掲載されています。タイトルの「朝日のように・・・」は最後に載っていました。曲のことはもちろん、トランペットのマウスピースとかW・M(おそらくウィントン・マリサリス)などの話題がオランダのビール、グロールシュなどと一緒に、小粋な小物として登場していました。
それより面白かったのはこれもジャズの曲名をタイトルした「あなたと夜と音楽と」です。物語としては、登場人物はDJの男女二人だけ、「あなたと夜と音楽と」と言うタイトルのFM(たぶん)音楽番組の進行にあわせて、殺人事件が解明されていくという比較的単純なストーリーです。季節はジャズボーカルがいっそう心に染みいる晩秋。
ほんとにちょうどよいテンポで話の合間に曲が登場します。まずタイトルの 「あなたと夜と音楽と」、これはインストルメンタルなのでしょうが、チェット・ベイカーの歌っているものがあったり、サッチモの「イッツ・ア・ワンダフル・ワールド」、ヘレン・メリルの「いそしぎ」、アニタ・オディの「私の心はパパのもの」、サラ・ヴォーンの「君去りし後」、クリス・コナーの「バードランドの子守唄」、そして最後がエラ・フィッジェラルドの「誰かが私を見つめている」と言う豪華さです。
しかも面白いのは、これらの曲がただ単に登場するだけでなく、殺人事件の犯人を明かす謎解きの鍵を握っているというわけです。読んでいるだけで楽しくなります。頁をめくりながら、ジャズボーカルが聞こえてきそうでした。
ちなみにここに登場した曲を自分のライブラリーで捜して見ました。タイトルの「あなたと夜と音楽と」はジュリー・ロンドンでかろうじて見つかりました。ビル・エバンスでもあるそうです。
あとは、ルイ・アームストロングの「イッツ・ア・・・」、クリス・コナーの「バードランド・・・」くらいしか見つけられませんでした。こんなところでもボーカルものが貧弱なわがライブラリーの弱点が露呈してしまいました。
この記事へのコメント
FUCKINTOSH66
「You and the Night and the Music」、"Last.fm" で検索してみたら、曲(音)だけですけど、ジュリーとビル以外で、Jamie Cullum, Chet Baker, Keith Jarrett, Grant Green, Alan Broadbent, Bob Berg, etc...のもありました。曲の原型を止めてないのもありますけど、聴き比べも楽しいですね♪(下のサイトで表示されてる曲名部分 "You and the Night and the Music" をクリックすると、各アーティストのページに飛んで、そこから試聴できます)
http://www.lastfm.jp/music?m=all&q=You+and+the+night+and+the+music
空兵ーS
便利なサイトがあるんですね。さっそくブックマークして利用させてもらいます。
ジャズの場合、同じ曲でも演奏者によってかなり違った印象になるので、こうして並べてもらえると聞き比べできていいですね。